◆油・ガス田の資産評価はまず原始埋蔵量評価から
油田やガス田が商業活動としての探鉱・開発対象となるためには、十分な経済性が見込まれる石油や天然ガスの埋蔵量が必要となります。そのため、埋蔵量評価を行うことによって、地下の鉱床に石油やガスがどのくらい存在しているのかを算定します。
埋蔵量評価では決定論的手法と確率論的手法の二つの算定手法が用いられ、探鉱・開発の各段階において適用可能な算定手法は異なります。さらに、新しいデータが取得されるたびに更新される貯留層モデリング作業においても、その変更の妥当性を検証するために埋蔵量が必要とされます。
また、石油開発企業の保有する埋蔵量は、その会社の企業体力を表す指標の一つとして株主や投資家から重要視されています。したがって、適切な算定手法で正確な埋蔵量を評価することは、石油開発に関連するプロジェクトを成功に導く上で必要不可欠なプロセスとなります。
◆過去10年間で109の油・ガス田を評価
その中で弊社は、過去10年(2005-2015)の間に、商社/銀行をはじめ電力会社/石油会社と共に21の国と地域において109に上る案件で油・ガス田の埋蔵量評価を行ってきました。
最近ではインドネシアからオーストラリアにかけて活発にガス田の探鉱・開発が進んでいます。これは探鉱段階に位置しており、まだ油田/ガス田と認められていないため、その手前の油・ガス田に昇格する可能性のあるプロスペクトに相当します。この中からオーストラリアにおける実績案件についてその概要を紹介します。
◆探鉱案件の原始埋蔵量評価
本プロジェクトでは、オーストラリア北西部におけるプロスペクトを評価できるように、インターネット上にバーチャル・データルーム(Virtual data room)が開設されていました。データルームで全体像を把握した後、いわゆる地質技術者(ジオロジスト)と油層技術者(レザバーエンジニア)が、現地のデータルーム(Physical Data room)に赴いて、直接データを検証し、評価を行っています。
対象となる鉱区ではエリアに対して掘削坑井数が少なく、油・ガス田に昇格する可能性を秘めたプロスペクトが複数認められています。このような探鉱段階のプロスペクトの評価では、油・ガス田鉱床が成立するための石油システムがどのようになっているかという点についても注目します。
石油システムは①熟成根源岩、②生成・移動・集積、③トラップの3つの要素から構成されています。①については石油根源岩の有無とキッチン・エリアから炭化水素が同鉱区内にチャージしている可能性を指摘し、②については炭化水素のキャリアーとなる砂岩層の存在と断層が発達していることから問題がないことを指摘し、③については貯留岩やシールの存在と移動してきた炭化水素を貯める仕組みとなるトラップを調査し、各要素の地質学的な成功確率(Psg)を評価しました。
原始埋蔵量については容積法で用いるパラメータの不確実性を確率分布で表現し、モンテカルロシミュレーションにより埋蔵量の確率分布を算出し、得られたMean値に地質学的なPsgを乗じて最終的な原始埋蔵量の評価としました。
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